CAREER GUIDE|レシピ開発を仕事にする
レシピ開発を仕事にする|仕事内容・料金・依頼を受けるための考え方
料理を作ることが好きで、オリジナルのレシピを考えるのも好き。 そんな経験を重ねるうちに、 「レシピを作ることを仕事にできないだろうか」 と考える人もいるでしょう。
レシピ開発というと、新しい料理を考え、 材料と分量、作り方をまとめる仕事を 思い浮かべるかもしれません。
もちろん、それも大切な仕事です。 けれど、仕事としてレシピを作るときは、 自分がおいしいと思う料理を考えるだけではありません。
そのレシピを誰が使うのか。 何のために必要なのか。 どんな条件の中で作るのか。 こうしたことによって、求められるレシピは変わります。
レシピ開発は、「何を作るか」を考える仕事であると同時に、 「その料理が実際に使える形になるまで考える仕事」でもあります。
料理が上手なことと、 ほかの人が再現できるレシピを作れることは、同じではありません。 自分では感覚的に作れる料理でも、 レシピとして渡すのであれば、 使う人にとって分かりやすく、 実際に作れる形になっていることが大切です。
この記事では、レシピ開発とはどんな仕事なのかを整理しながら、 家庭向けレシピの開発、飲食店や企業からの依頼、 食品の商品開発など、仕事によって何が違うのかを見ていきます。 あわせて、料金の考え方や、 依頼を受けるときに確認しておきたいことも順番に紹介します。
レシピ開発とは、どんな仕事?
レシピ開発というと、新しい料理を考え、 材料や分量、作り方をまとめる仕事を 思い浮かべるかもしれません。
けれど、仕事としてレシピを作るときは、 まず確認しておきたいことがあります。 そのレシピが、 誰に、どこで、何のために使われるのか ということです。
同じ料理でも、家庭で作るレシピなのか、 飲食店の厨房で提供する料理なのか、 工場で製造して販売する食品なのかによって、 求められる条件は変わります。
身近な材料や家庭の調理器具で、 無理なく作れること。
その店の設備や提供方法の中で、 実際に調理できること。
工場の設備や製造工程の中で、 安定して再現できること。
また、依頼主と、 実際にレシピを使う人が同じとは限りません。
たとえば食品メーカーから依頼を受けても、 開発するのが家庭向けレシピということがあります。 自社の商品を家庭でどう使えるかを紹介するために、 Webサイトやパンフレットなどで掲載するレシピを 依頼されるケースです。
この場合、依頼主は企業ですが、実際にレシピを使うのは家庭で料理をする人です。 材料の手に入りやすさや、 一般的な家庭の調理器具で作れるかどうかも考えます。
家庭向けのレシピにも、目的によって違いがある
家庭向けだからといって、 すべてを簡単にすればよいわけではありません。
「10分で作れる料理」が求められているなら、 材料や工程をできるだけシンプルにすることに価値があります。
一方、本格的な料理やおもてなし料理なら、 おいしさや料理の特徴を出すために、 必要な材料や工程を残すことも大切です。
大事なのは、材料や工程を減らすことそのものではありません。 そのレシピの目的に必要なものを見極めることです。
レシピ開発では、誰から依頼されたかだけでなく、 誰が、どこで、何のために使うのか によって設計を変えます。 その条件に合った形まで考えることが、 仕事としてレシピを作る出発点になります。
料理が上手な人と、レシピを作るのが上手な人は少し違う
料理に慣れている人は、 レシピに細かく書かれていなくても、 材料の状態を見ながら調整できます。
野菜の水分が多ければ、調味料の量を調整する。
火が入りにくければ、切り方や加熱時間を変える。
味を見ながら、調味料を加減する。
こうした判断が自然にできるのは、 料理を繰り返してきた経験があるからです。
けれど、レシピでは、 こうした判断を作る人の経験や感覚だけに任せてしまうと、 仕上がりに差が出やすくなります。
料理が上手なことと、 ほかの人が同じように作れるレシピを作ること は、少し違います。
「適量」「いい感じ」を、そのままにしない
自分で料理をするだけなら、 「適量」「いい色になるまで」「やわらかくなるまで」 といった表現でも困らないことがあります。
けれど、レシピとして使われるときは、 その言葉だけでは判断しにくいことがあります。
たとえば「いい色になるまで」であれば、 どのくらいの色が目安なのか。 「やわらかくなるまで」であれば、 箸や竹串を入れたときに、 どのような状態になればよいのか。
すべてを細かな数字に置き換える必要はありません。 大切なのは、 作る人が迷いそうなところに、 判断できる目安を置くこと です。
自分の中では当たり前になっている感覚や経験を、 ほかの人にも分かる形に置き換える。 そうすることで、作る人が変わっても、 仕上がりの差を小さくできます。
自分だけの感覚に頼らず、 ほかの人でも再現できる形に整えることが、 レシピ開発の仕事です。
飲食店からレシピ開発の依頼があったら、まず確認したいこと
私の経験では、飲食店からレシピ開発を依頼される機会は、それほど多くありません。多くの飲食店では、メニューは料理人やスタッフが自分たちで考えています。
それでも、外部にレシピ開発を依頼することがあります。大豆ミートを専門に扱っていたことから依頼をいただいたケースや、喫茶店から新しいメニューのレシピを依頼されたケースがありました。
もし飲食店からレシピ開発の依頼を受けたら、すぐに料理を考え始めるのではなく、まずどのようなメニューを必要としているのかを確認します。
その店で実際に作れるレシピにする
飲食店向けのレシピは、おいしく作れるだけでは十分ではありません。
その店にある設備で作れるか。営業中でも負担になりすぎない工程か。販売価格に対して原価は合うか。こうした条件も考えながら、実際に提供できる形にしていきます。
ひと手間加えることでおいしくなっても、その工程に時間や人手がかかりすぎれば、そのまま採用できないこともあります。
残したほうがよい工程なのか、簡略化できるのか、別の方法に置き換えられるのか。おいしさと営業のしやすさの両方を見ながら、レシピを整えていきます。
レシピ以外の仕事まで求められることもある
「レシピを作ってほしい」という依頼で始まっても、実際にはレシピを渡して終わりとは限りません。
実際の厨房で試作をしたり、店の設備に合わせて調理方法を調整したり、原価を確認したりすることもあります。
さらに、案件によってはスタッフへの説明やメニュー表示、テスト提供など、メニューを実際に導入するところまで仕事が広がることもあります。
そのため、依頼を受けるときは、レシピを何品作るのかだけでなく、どこまでの仕事を求められているのかを確認しておくことが大切です。
商品開発は、家庭料理のレシピを大きくすればよいわけではない
家庭でおいしく作れた料理でも、そのまま分量を増やせば商品になるわけではありません。
工場では、使える設備や製造工程が決まっています。家庭なら、途中で火加減を変えたり、味を見ながら調整したり、必要に応じて下処理を加えたりできますが、工場の製造では同じようにできないことがあります。
そのため、商品開発では、まず家庭のレシピを基準にするのではなく、その工場でどのように製造できるのかを確認する必要があります。
家庭で作れたものが、工場では再現できないこともある
実践から
家庭では作れたシチューが、工場では再現できなかった
以前、大豆ミートを使ったシチューの商品開発に取り組んだことがあります。
家庭では、大豆ミートに必要な下処理をしてから調理することで、納得できる味に仕上げることができました。
ところが、その下処理を工場の製造工程に組み込むことが難しく、家庭で作ったときと同じ仕上がりを再現できませんでした。
結果として、この商品は開発を中止しました。
家庭でおいしく作れることと、工場で商品として作れることは別です。
この経験から、レシピが完成したから商品になるのではなく、製造する場所の設備や工程まで含めて考えなければならないことが分かりました。
大量に作るからこそ、配合を細かく調整する
商品として何千食、何万食と製造する場合は、材料のわずかな違いも積み重なっていきます。
たとえば、1食あたりの調味料が0.1g違うだけでも、何千食、何万食と製造すれば、その差は原価に積み重なっていきます。
だからといって、材料を減らせばよいわけではありません。味や品質のために、むしろ増やしたほうがよいこともあります。
商品開発では、おいしさと品質、コストを見ながら、0.1g単位で配合を調整することもあります。
一度で答えが出るとは限らず、少しずつ配合を変えながら、「ここならおいしさもコストも無理がない」というところを探していきます。
商品開発では、料理以外の専門知識が必要になることもある
工場で作る商品には、設備や製造工程だけでなく、保存や品質を保つための条件も関わります。
商品によっては、食品添加物についての専門的な知識が必要になることもあります。
私自身、食品添加物について専門的な知識を持っていたわけではないため、そうした知識を必要としない範囲の商品開発を中心に取り組んできました。
商品開発では、料理ができることだけですべてを判断するのではなく、自分で対応できる範囲と、別の専門家の知識が必要な範囲を見極めることも大切です。
商品開発は、家庭向けのレシピを大量生産用に拡大する仕事ではありません。
工場の設備や工程、品質、原価などの条件に合わせて、商品として製造できる形に組み直していく仕事です。
レシピ開発は、試作を重ねながら答えを探す仕事
レシピ開発では、最初に考えた配合や作り方が、そのまま完成形になるとは限りません。
実際に作ってみると、味が強すぎたり、食感が思ったようにならなかったり、工程が複雑だったりします。そこから材料の量や組み合わせ、加熱時間、作る順番などを少しずつ変えて、もう一度作ります。
この繰り返しは、料理というより、少し理科の実験に近いところがあります。
「何となくこちらの方がおいしい」で終わらせるのではなく、何を変えたことで仕上がりがどう変わったのかを確かめながら、完成に近づけていきます。
一度にいくつも変えすぎない
試作するときに、材料も分量も工程も一度に変えてしまうと、何が結果に影響したのか分からなくなります。
たとえば塩分を調整したいのであれば、まず塩の量だけを変えて比べる。食感を変えたいのであれば、加熱時間や水分量など、原因になりそうなところを一つずつ確認していきます。
少し遠回りに見えても、条件を整理しながら試した方が、結果として答えに近づきやすくなります。
試作には、時間も材料費もかかる
レシピ開発で見落としやすいのが、試作にかかる時間と材料費です。
一度で完成すればよいのですが、実際には何度も材料を買い直し、同じ料理を繰り返し作ることがあります。
特に、自分があまり扱ったことのない食材や料理では、完成までにどのくらい試作が必要になるのかを予測しにくくなります。
反対に、よく知っている食材や得意な分野であれば、「ここを変えればよくなりそうだ」という見当をつけやすく、試作の回数も抑えやすくなります。
レシピ開発では、料理を考える力だけでなく、試して、比べて、修正する作業を続けられることも大切です。
ただし、試作を続ければ必ず答えが出るとは限りません。ここが、レシピ開発の悩ましいところです。
レシピ開発は、依頼を受ける前の見極めも大切
だからこそ、依頼を受ける前に、自分の経験や知識で、完成までの道筋をある程度見通せる仕事なのかを考えることも大切です。
「できるか分からないまま受ける」は避けたい
依頼内容を聞いた段階で、自分だけでは判断できない専門知識が必要だと分かることもあります。
また、試作を始めてから、依頼された条件のままでは納得できるものを作るのが難しいと分かることもあります。
そんなときに、何とか完成させようと試作を続けることが、必ずしもよいとは限りません。
自分の専門外であれば、そのことを伝える。条件を変えれば対応できるのであれば、依頼者と相談する。場合によっては、仕事を引き受けないという判断も必要です。
レシピ開発では、「どう作るか」を考える力だけでなく、「自分がこの仕事を完成させられるか」を見極める力も必要です。
レシピ開発の料金は、仕事の内容によって大きく変わる
レシピの仕事には、冊子や機関紙、広報誌、新聞、食品メーカーのWebサイトなどに掲載する家庭向けレシピから、飲食店のメニュー開発、食品の商品開発まで、さまざまなものがあります。
どれも「レシピ1品」として依頼されることがありますが、料金には大きな幅があります。
家庭向けレシピは、実際の募集を見て相場感をつかむ
家庭向けレシピの仕事では、1レシピ2,000〜3,000円程度で募集されているものもあります。
もちろん、家庭向けでも実際に試作し、家庭で安定して作れるかを確認します。さらに、撮影や栄養計算などが含まれれば、料金も変わります。
これからレシピの仕事をしたい人は、クラウドソーシングや求人情報で「レシピ作成」「レシピ考案」などと検索してみると、現在の募集内容や金額を知る参考になります。
販売するためのレシピは、求められる責任が違う
一方、飲食店のメニューや食品の商品開発では、そのレシピをもとに作られた料理や商品が販売されます。
そのため、家庭で使うレシピとは、求められる責任の質が違います。
私がこれまで受けてきた商品やメニューに関わるレシピ開発では、1レシピあたり3万円〜10万円ほどの仕事がありました。
ただし、これはレシピ開発全体の相場ではなく、私自身が実際に受けてきた案件での金額です。
料金を決める前に確認しておきたいこと
料金を考えるときは、金額だけでなく、依頼に含まれる内容を確認します。
| レシピ数 | 何品作るのか |
|---|---|
| 試作・修正 | 何回まで含めるのか |
| 材料費 | 誰が負担するのか |
| 写真撮影 | 撮影や写真納品まで含むのか |
| 原価計算 | 原価の算出まで必要なのか |
| 現地対応 | 依頼先での試作や調整が必要なのか |
| 使用範囲・権利 | レシピや写真がどこで使われるのか、権利の扱いはどうなるのか |
| 契約方法 | 開発料か、ロイヤリティ契約か |
「1レシピ○円」だけではなく、その金額に何が含まれているのかを確認することが大切です。
ロイヤリティという契約もある
商品開発では、開発料ではなく、商品の販売数や売上に応じて報酬を受け取るロイヤリティ契約になることもあります。
私が経験した案件では、試作に使う材料費を自分で負担しながら開発したこともありました。
ロイヤリティ契約では、割合だけでなく、試作費や材料費を誰が負担するのか、商品化されなかった場合はどうなるのかまで確認しておくことが大切です。
最初の仕事につなげるには、得意分野を見える形にする
レシピ開発を仕事にしたいと思っても、最初から依頼があるわけではありません。
依頼する側から見れば、その人がどんな料理を作れるのか、どんな食材に詳しいのか、どこまで仕事を任せられるのかが分からなければ、声をかけるきっかけもありません。
そこで大切になるのが、自分の得意分野を、外から見ても分かる形にしておくことです。
「何でも作れます」より、得意なものが分かるほうが伝わりやすい
レシピ開発には、家庭料理、菓子、パン、発酵食品、アレルギー対応、特定の食材を使った料理など、さまざまな分野があります。
何でも対応できることを伝えるよりも、「この食材について詳しい」「この料理なら何度も作っている」「この分野のレシピを多く持っている」と分かるほうが、依頼する側も相談しやすくなります。
得意分野があることは、仕事を見つけてもらうためだけではありません。よく知っている分野ほど完成までの見通しを立てやすく、試作にかかる時間や材料費も予測しやすくなります。
仕事につながるきっかけは、意外なところにある
実践から
Amazonで販売していた商品が、レシピ開発の依頼につながった
私が企業から初めてレシピ開発の相談を受けたきっかけも、レシピ開発の営業をしていたからではありませんでした。
当時、大豆ミートの商品をAmazonで販売しており、それを見た企業から声をかけていただきました。
大豆ミートを扱っていることが外から見える形になっていたことで、「この食材について相談できる人」として見つけてもらえたのだと思います。
レシピそのものを販売していなくても、商品を販売する、料理を紹介する、記事を書く、SNSで発信するなど、自分が何を得意としているのかが伝わるものを持っておくことが、仕事の入口になることがあります。
実績が少ないうちは、自分で見せられるものを作る
最初は、企業から依頼された実績がなくても構いません。
自分でテーマを決めてレシピを作り、材料や分量、工程をきちんとまとめておけば、それ自体が「どんなレシピを作れる人なのか」を伝える材料になります。
数を増やすことだけを目的にする必要はありません。
自分がこれから仕事にしたい分野について、「この人なら、このテーマを相談できそうだ」と伝わるものを少しずつ積み重ねていくことが、最初の依頼につながる準備になります。
「料理を作れる」から、「仕事として任される」へ
レシピ開発は、おいしい料理を考えるだけではありません。誰が、どこで、何のために使うのかを考え、実際に使える形に整えていく仕事です。
そのためには、試作を重ねる力だけでなく、自分が対応できる仕事を見極めることや、料金に含まれる仕事の範囲を確認することも必要です。
そして、最初の仕事につなげるには、まず自分の得意な料理や食材を明確にし、「この分野ならこの人」と分かる形にしておくことが大切です。
料理を作る経験を積み重ねながら、ほかの人が使えるレシピにする力を身につけていくことが、レシピ開発を仕事にする第一歩です。
